2025.09.30

六韜

弁護士 西村 幸三

「六韜」は、中国の古代の兵法書として高名なものの1つである。

武経七書『孫子』『呉子』『尉繚子』『六韜』『三略』『司馬法』『李衛公問対』といわれるものの中では、やはり孫子が優れているが、原文は文章が短くて意味を採るのは簡単ではなく、解説書が無限に出てくるのもやむを得ないところである。

六韜はその中では論理が明晰で読みやすいが、戦術論、戦略論としての深みでは孫子には二歩三歩譲ると思う。

弁護士業は、戦争の現場指揮官に似ている。

六韜は、もっと為政者の心構えに寄っており、平時の会社経営者にも通じる心構えを説いているともいえる。

 

大公望が文王に曰く、
「将帥には、必要な5つの資質と、あってはならない10の過ちがあります。

将の5つの資質とは、勇・智・仁・信・忠です。

1.勇があれば、何事も果断に行動するので、誰もこの将を打ち負かすことはできません。

2.智があれば、判断に惑いがないので、誰もこの将を混乱させることはできません。

3.仁があれば、人びとを愛し、人心は団結します。

4.信があれば、人を裏切り欺くことがありません。

5.忠があれば、君主に対して二心がありません。

将の10の過ちとは

1.勇敢ではあるが死を軽んずること。そのようなものは敵に挑発されて暴発し、無謀な局面でも戦いに踏み込んでしまいます。

2.性急でとにかく速断してしまうこと。そのようなものは、敵に持久戦に持ち込まれた時に軍を消耗させます。

3.貪慾で利益を好むこと。そのようなものは調略されます。

4.思いやりはあり優しいが忍耐力に乏しいこと。そのようなものは敵に振り回されて軍を消耗させます。

5.物識りではあっても物怖じすること。そのようなものは、戦場での追い詰められた逆境には耐えられません。

6.誠実ではあるが、簡単に人を信じてしまうこと。そのようなものは、敵に容易に欺かれます。

7.清廉潔白ではあるが、寛容と仁愛がないこと。そのようなものは、味方からも敵からもあなどられます。

8.物識りではあるが、頭と心の動きが遅いもの。そのようなものは、奇襲に対応できません。

9.剛直で自分でなんでもしようとすること。そのようなものは、敵から仕掛けられる度に疲弊していきます。

10.怠惰・懦弱で人任せにすること。そのようなものは、敵から欺かれ、簡単に足許を救われます。