「ドラッカー名言集」の「仕事の哲学」「経営の哲学」「歴史の哲学」 「変革の哲学」の4冊シリーズは、ドラッカーの硬質で読みにくい大部の書籍を読み解く時間がない人には、大変便利なアンソロジー集である。
ドラッカーの文章は、アンソロジーであっても、十分に深みがあり、背後の含蓄を考えさせ、そして、読む者に反省を促す。
一文一文がそのような文章であるから、ドラッカーの思考のひだに波長を合わせながら大部の書籍を読み解くには、結構な気構えと労力を要するといえるだろう。
ドラッカーの解説書なる書籍が連綿と耐えることが無いのは、そのためである。
ただ、ドラッカーの採り上げたテーマをオリジナルの文章で一通り概観できる解説書というのはあまりなく、解説の方が蛇足であることも多いので、この4冊シリーズは結構お勧めであると思う。
一文一文を咀嚼して、自分の言動をドラッカーの思考のひだに落とし込んで、検証して見直してみよう。
「自らの成長のために最も優先すべきは、卓越性の追求である。そこから充実と自信が生まれる。能力は仕事の質を変えるだけでなく、人間そのものを変えるがゆえに、重大な意味を持つ。」
「成長に最大の責任をもつ者は、本人であって組織ではない。自らと組織を成長させるためには何に集中すべきかを、自ら問わなければならない。」
「成功の鍵は責任である。自らに責任を持たせることである。あらゆることがそこから始まる。大事なものは、地位ではなく責任である。責任ある存在になるということは、真剣に仕事に取り組むということであり、仕事にふさわしく成長する必要を認識するということである。」
「人は誇れるものを成し遂げて、誇りをもつことができる。さもなければ、偽りの誇りであって心を腐らせる。人は何かを達成したとき、達成感をもつ。仕事が重要なとき、自らを重要と感じる。」
「日常化した毎日が心地好くなったときこそ、違ったことを行うよう自らを駆り立てる必要がある。」
「意思決定を行うことのできる人ならば、学ぶことによって、起業家的に行動することも、起業家となることもできる。企業家精神とは、気質ではなく、行動である。」
「起業家は、変化を当然かつ健全なものとする。彼ら自身は、それらの変化を引き起こさないかもしれない。しかし、変化を探し、変化に対応し、変化を機会として利用する。これが、起業家および企業家精神の定義である。」
「仕事上の関係において成果がなければ、温かな会話や感情も無意味である。貧しい関係のとりつくろいに過ぎない。逆に、関係者全員に成果をもたらす関係であれば、失礼な言葉があっても人間関係を壊すことはない。」
「組織内の摩擦のほとんどは、たがいに相手の仕事、仕事のやり方、重視していること、目指していることを知らないことに起因する。問題は、たがいに聞きもせず、知らされもしないことにある。」
「真に例外的な問題を除き、あらゆるケースが基本に基づく解決策を必要とする。原則、方針、基本による解決が必要となる。一度正しい基本を得るならば、同じ状況から発する問題はすべて実務的に処理できる。」
「忙しい人たちが、やめても問題のないことをいかに多くしているかは驚くほどである。楽しみでも得意でもなく、しかも古代エジプトの洪水のように毎年堪え忍んでいるスピーチ、夕食会、委員会、役員会が山ほどある。なすべきことは、自分自身、自らの組織、他の組織になんら貢献しない仕事に対しては、ノーということである。」
「何かを伝えるには、まとまった時間が必要である。計画や方向づけや仕事ぶりについて、部下と15分で話せると思っても、勝手にそう思っているだけである。肝心なことをわからせ、何かを変えさせたいのであれば、一時間はかかる。」
「組織内の話し合いはくつろいで行わなければならないだけに、膨大な時間を必要とする。ゆとりがあると感じられなければならない。それが結局は近道である。」
「仕事の関係に人間関係がからむと、時間はさらに必要になる。急げば摩擦を生じる。あらゆる組織が、仕事の関係と人間関係の複合の上に成り立つ。ともに働く人が多いほど、その相互作用だけで多くの時間が費やされる。仕事や成果や業績に割ける時間がそれだけ減る。」