相談者にわかりやすい説明を

私は、弁護士に相談しようという人の目に弁護士がどういうふうに映るか、ということを、常々自戒をこめつつ、考えております。

弁護士の仕事は、医者の仕事ににています。まず、多くの場合、彼我の知識の差が圧倒的です。ごく基本的な法的知識で も、一般の人には、よほどわかりやすく説明するよう心がけないと、まず理解してもらえません。

とはいえ、医院に行けば、患者ご自身には病気になった原因が理解できてはいないけれど、当座の対処療法(例えば痛み止め )は処方できてしまう、ということが結構あります。

しかしそれが根本治療になっているかがまず問題です。

多くの場合、軽い症状の後ろに、深刻な慢性疾患が潜んでいるものです。

さらに、患者が病気になった原因に気づき、以後、病気再発防止のための生活習慣を身につけられるかも、大切です。

高血圧や糖尿病などの成人病の治療でもっとも決定的で、しかも難しいのは、食餌療法です。 つまり「自分で病気の原因を自覚し、取り除く大切さに気付くこと」なのです。

仏教の始まりはお釈迦様にありますが、釈迦の教えの根本は、
「世の中は苦しみにあふれている。それなら、苦しみの原因がなにかを発見しよう。そして、苦しみの原因を取り除こう。そうすれば、あなたは苦しみから解放され、平穏と幸せが訪れる」
というものです。トラブルに対する、シンプルにして、究極の解決法だと思います。

多くの相談者は、法律事務所に駆け込むとき、果たして何が問題なのかすら絞り切れず、自分ではどうしていいかわから なくなっています。

私は、「難しい問題をシンプルに整理し、説明し、解決する」ことが優秀な弁護士の条件であると考えます。

難しいことを難しく説明することは、何も弁護士でなくても、多少屁理屈の立つ人であれば、誰にでもできます。しかし 、人にわかりにくく、あいまいに、難しくしか説明できないという人は、多くの場合、知識が血肉と化していないか、知識があってもさらりと実行できるまでの能力に結びついていないのです。

さらに、逆に「単純な問題を、単純な解決に向かわせずに、複雑に、複雑な方に誘導して、周囲や相手を混乱に陥れる」 人もいます。ヤクザ、事件屋、クレーマーといった不法要求者の手口は、これです。借金を漫然と繰り返して家族・親族 ・友人など周囲を保証などに巻き込み迷惑をかける人も似たところがあります。

善良な人がトラブルに巻き込まれた場合も、弁護士から指摘するまでそれが問題点であったということすらわからないような人が結構います。むしろ解決すべきはその事業や生活全体の問題なのに、目先のごく一部の瑣末なトラブルだけを免 れようとして相談する人がいます。借金相談などではしょっちゅうです。こういう人は、「全体を把握することができずに混乱している→難しくて茫然としている」のです。

そういう人には、「何も難しくないんだ」ということを問題をさらりと整理して説明してあげることが、最良の治療方法です。

弁護士として、難しいことをわかりやすく説明する能力を高める努力を不断に続けていけば、複雑な問題を簡単なものに解きほぐし解決するという能力が高まっていきます。そしてその能力は、弁護士になってからも、法的知識のスキルアッ プの努力と、「この話がこの相談者に理解できているか」という共感を持つ努力を、意識的に続けないと、どんどん鈍ってしまいます。

「弁護士によって話のわかりやすさに差がひどくある」「若い弁護士の話がわかりにくかった」「年輩の弁護士の話がわかりにくかった」という話をよく聞きますが、これは、多分に、蓄積した努力(意識して積み重ねた研究と場数)の差で もあります。話があいまいでないか、わかりにくくないかは、その人の能力の示すバロメータになります。

同じ年数弁護士をやっても、漫然と仕事を流してきた弁護士と、案件ごとに意識してその取扱分野の拡張・一段のスキルアップを心がけてきた弁護士とでは、5年10年で圧倒的に差がついてしまうのです。

私の場合、知識としてない分野、調べないとわからないような分野のことは、「こういう理由で今はわからない。あとで調べるか、あるいは別の専門弁護士に聞く方がよいと思う」「どちらもありうるので簡単に結論を出すべきではない」と はっきり答えます。すぐに結論が出せない問題でもごまかさず、わからないならわからないという答えとして、相談者に明解であることが、大切なのです。

繰返しになりますが、これは私自身、常々自戒しないといけない点です。

借金を抱えた人の相談を聞くにあたって

(カウンセリングを大切に)

借金の整理の相談が激増しています。

借金の整理方法としては、一番簡単には自己破産という選択肢があります。

しかし、人によっては、個人再生手続を選択して、住宅を残したり、破産しても免責されないといった危険を回避する方がよい場合があります。

さらに、借入額が少なかったり借入期間が比較的長期の借入が多い場合、債務整理・特定調停・過払金返還訴訟などによって、借金を大きく圧縮できるような場合もあります。

相談者の中には、相談前に聞いた知識を元に、最初から「これ」と、希望する手続を決めてかかる人がいます。たとえば破産を希望される場合は比較的判断は簡単です。 しかし、個人再生や債務整理など、いわゆる「払っていく」「再建型」の手続を希望される場合は、私は、すぐに「やりましょう」「引き受けます」ということは、まずありません。以下のような点を聞きただします。

・相談者の収入・家計費
・住宅ローン額(月払・ボーナス払)・家賃
・家族構成・子供にかかる費用
・クルマ、生命保険、携帯電話、娯楽費など、家計にわずかでも無駄がないか
・一体、どれだけが、確実な返済余力と言えるか
  (なぜなら相談者の見とおしは概して甘いものである)
など、初めにできるだけチェックします。こういったことを最初に執拗に聞くことで、その相談者の生活態度・立ち直りの可能性が実は結構見えてきます。さらに

・夫と妻で、家計の無駄を発生させているのはどちらか、締まり屋はどちらか。
・夫婦は、お互いに「苦言」を呈しても喧嘩にならず前向きに対処できる関係か。
・夫婦は、お互いの都合の悪い情報でも、相手に隠さず話せる関係か。
などを会話の中から洞察します。単身者の場合は、自制心をどこまで維持できるか根の強さを洞察していきます。相談者が親子などに変わっても、大差はありません。

なぜそんなことを聞くか?と言われると困るのですが、長年多くの家族を見てきて、私が確信しているのは、「家族(夫婦)仲が悪い家庭は金がたまらない」「夫婦の一方が隠しごとをする家庭は経済的に破綻しやすい」「意志疎通の欠如と精神的不満は無駄と浪費を招き、経済的に破綻しやすい」ということです。もっと踏み込んで言えば「借金癖のある人は、嘘をつく癖ができていることが多い。借金以上に、何度となく言い逃れの嘘を付くために周囲の信用を失うことが多い」のです。

ですから、相談者本人も家族も「苦しく辛い実態を正面から認識し、理解してもらう」「問題から逃げない。言い逃れしない。小さな嘘であっても決して付かない」ことから始め、その上で「今後、前向きに考えられる」選択肢が何かを、相談者自身に考えてもらいます。

相談者に手続の説明をし、相談者の経済状態・家族関係について私が分析した内容を話しますと、ほとんどの相談者は、私もそれが妥当と思った正しい手続を、自分で選択してくれます。

しかし、たまに、そこで意見が合わないことがあります。そういう場合は、家族も呼んで、「隠しごとなく」状態と分析内容を説明して、みなさんの家庭の経済状態に対する意見、今後10年、20年の夫婦や子供たちを含めた人生の設計図をじっくり聞いていきます。家族にとって「大切なことは何か」考えてもらいます。

そこまでいくと、大体、借金整理について、正しい方向での処理を選択されることになります。

さて、それでも私と処理方針の意見がどうしても合わない時もあります。そんな時どうするか・・・

依頼をお断りします。

方針が合わない、その方法では立ち直る見込みが乏しいと思う人に、弁護士費用をもらって(お金と時間の無駄になるかもしれない、ああきっとこの人はいずれまた駄目になるだろう、と、嫌な予感を持ちながら、その場しのぎの)手続を進めるのは、嫌なものです。私自身が自分のやっていることを評価できないようでは、仕事をしていても情けなくなります。やはり、私の事務所の扉をくぐったからには、その相談者については、たとえ絶対とまでいえなくても、なんとしても立ち直ってほしいと思います。

昔の依頼者から何年か経って突然連絡をもらって、「今はこんなに生活もよくなって幸せです」と言ってもらえるのが、何より喜びです。一方、話をしているだけで、ああ、この人の気持の持ち方では多分将来もよくならないだろう、と感じてしまう人の依頼は、こなす方も陰欝です。

そういった振り分けで受任するかしないかを判断するのは、弁護士のわがままかもしれません。でも、それが私のスタイルのように思います。

個人民事再生


個人民事再生とは、簡単に言えば、
「収入や借金額によっては最大で8割(人によっては9割)程度借金をカットして、残りを利息無しの3年払いで支払う制度」
「住宅ローンは払い続けて、住宅ローン以外の債務、すなわちサラ金・クレジットからの借入や人の保証をした債務などをカットすることができる制度」
です。

破産というイメージの悪さを避けたいという人も、この手続を使いたいという人が増えています。

しかし、以下のような注意点(ハードル)があります。

1.申し立てるには、給与などの安定した収入があることが必要。自営業者であれば年間所得が安定していること。変動が激しい人は利用できない。また自営業者で確定申告をしていないなどの事情があると難しくなる。

2.サラリーマンだけが使える「給与所得者等再生」と、自営業者でも使える「小規模個人再生」があるが、小規模個人再生の場合は、債権者の過半数が反対すると債務のカットができない。

3.給与所得者等再生は、債権者の同意なしに負債をカットできる。所得が低く扶養家族が多い人ほど許されるカット率は高くなり、有利。逆に所得が高く扶養家族が少ない場合はカット率が低い。またカットには額の上限があり、どんなケースでも支払総額100万円以下にはカットできない。

4.住宅を残してその他の負債をカットする方法を「住宅再生」と呼ぶ。住宅再生を利用できるのは、申し立てる人が現に住んでいる自宅だけである。床面積の2分の1以上が専用住宅である必要がある。

5.住宅ローン以外の抵当権が住宅に設定されていると、住宅再生は使えない。

6.住宅ローン以外の負債が5000万円を超えていると(利息損害金込み)、個人再生そのものが申し立てできない。

7.預金や保険の解約、車の売却などで100万円以上の換金が見込める人や持っている不動産に価値(時価から抵当権負担の残額を引いた額)がある人は、その財産価値の額は、最低限弁済しないといけない(要するにプラス財産がある場合はそれ以下には借金をカットできない)。注意する必要があるのは退職金で、仮に今退職すると仮定した場合の退職金見込額の8分の1が、財産とカウントされる。たとえば、保険の解約で返戻金の見込みが100万円、退職金見込額が2000万円ある人は、少なくとも100万+250万円=350万円以上を、最低弁済額として支払わないといけない。また、住宅ローンが2000万円あるが住宅の時価が3000万円あるという場合、最低弁済額は1000万円以上、となる。この場合それを3年から5年で返済するという計画を立てるしかない。このように、そもそも再生計画の立案すら絶望的な場合があるので、注意が必要である。

そして、こういった手続にあるハードル以上に大切なのは

8.カットした後にも借金は残る。残った借金の支払いが堅実かつ計画的にできる人であること。

という点です。私は、この点がクリアできない人の依頼はお断りしています。また破産した方がかえって将来設計を前向きに描きやすいような場合は破産をおすすめします。住宅ローンの額自体が過大で、そもそも住宅ローンだけでも返していけないのに個人再生を希望して相談される人が多いです。そういう人はたとえ個人再生が通っても、またすぐ生活できずに借金をよけい増やすだけです。その点を検討した上で、手続を選択するようアドバイスします。

さて、給与所得者等再生の場合、「最低弁済額がいくらになるか」を計算しないと、カット後の月額返済額が計算できず、申立が可能かも見とおしが立ちません。

これを計算するには、
(1)過去2年分の源泉徴収票
(2)過去2年分の住民税課税証明書
(3)社会保険料(健康保険料)が給料から引かれていない場合は支払っている健康保険料・国民年金の2年分の領収書または役場の証明書
(4)世帯全員の記載された住民票
を、用意してください。

用意していただければ、資料に基づいて見込が計算できます。というより、最低限これが計算できないと、見込みが説明できません。なお、退職金が見込まれる場合は、就業規則・退職金規程などで見込み額を仮に算出する必要があります。

借金の整理方法は、破産だけでもありませんし、個人再生だけでもありません。いろんな可能性をめぐらせながら、相談者にとってどれが一番妥当な方法か、真剣に悩みながら、アドバイスすることになります。

債務整理の道すじの選択のむつかしさ


借金の整理方法としては、一番簡単には自己破産という選択肢があります。

しかし、人によっては、個人再生手続を選択して、住宅を残したり、破産しても免責されないといった危険を回避する方がよい場合があります。

さらに、借入額が少なかったり借入期間が比較的長期の借入が多い場合、債務整理・特定調停・過払金返還訴訟などによって、借金を大きく圧縮できるような場合もあります。

相談者の中には、相談前に聞いた知識を元に、最初から「これ」と、希望する手続を決めてかかる人がいます。たとえば破産を希望される場合は比較的判断は簡単です。

しかし、個人再生や債務整理など、いわゆる「払っていく」「再建型」の手続を希望される場合は、私は、すぐに「やりましょう」「引き受けます」ということは、まずありません。以下のような点を聞きただします。
・相談者の収入・家計費
・住宅ローン額(月払・ボーナス払)・家賃
・家族構成・子供にかかる費用
・クルマ、生命保険、携帯電話、娯楽費など、家計にわずかでも無駄がないか
・一体、どれだけが、確実な返済余力と言えるか
  (なぜなら相談者の見とおしは概して甘いものである)
など、初めにできるだけチェックします。こういったことを最初に執拗に聞くことで、その相談者の生活態度・立ち直りの可能性が実は結構見えてきます。さらに

・夫と妻で、家計の無駄を発生させているのはどちらか、締まり屋はどちらか。
・夫婦は、お互いに「苦言」を呈しても喧嘩にならず前向きに対処できる関係か。
・夫婦は、お互いの都合の悪い情報でも、相手に隠さず話せる関係か。
などを会話の中から洞察します。単身者の場合は、自制心をどこまで維持できるか根の強さを洞察していきます。相談者が親子などに変わっても、大差はありません。
なぜそんなことを聞くか?と言われると困るのですが、長年多くの家族を見てきて、私が確信しているのは、「家族(夫婦)仲が悪い家庭は金がたまらない」「夫婦の一方が隠しごとをする家庭は経済的に破綻しやすい」「意志疎通の欠如と精神的不満は無駄と浪費を招き、経済的に破綻しやすい」ということです。もっと踏み込んで言えば「借金癖のある人は、嘘をつく癖ができていることが多い。借金以上に、何度となく言い逃れの嘘を付くために周囲の信用を失うことが多い」のです。

無理な債務整理は、事故のもと


債務整理というのは、弁護士が消費者金融・クレジット会社に交渉して、借入額を減らし、毎月の返済額を減らして3〜5年かけて借金を完済してしまうプランを立てることを言います。

たとえば、消費者金融5社から28〜29%の金利で、5年間各50万円をずっと借り続けてきたという人がいるとします。

消費者金融への支払いが苦しい、となった時に、借りている本人(しろうと)が消費者金融に交渉しても、消費者金融は「50万円返してください」というだけで「無理だ」となって話が終わります。しかし、弁護士が交渉すると、5年分の利息の取りすぎ(利息制限法違反の利息分)を言い逃れることができず、元金から差し引いてもらえます。

たとえば、消費者金融のATMカードで出し入れして5年間50万円借り続けていれば、弁護士が間に入って話をすれば、残高は0円前後になります。つまり、5社で250万円だった借金が0になるということもありえます。

しかし、借入期間が2〜3年ほどで短ければ、元金が減っても5〜7割は残ります。

あるいは、カードローンによっては金利が15%程度のこともあります。このような場合何年借りていても利息の取りすぎが起きないので、元金はそのまま残ります。

弁護士がカウンセリングをして債務整理、すなわち消費者金融・クレジット会社に交渉する場合、「原則3年で、元金だけを全部返してしまって借金を0にする」というプランを立てます。そして、そのプランの実行中の3年間の利息を殆どの場合ほぼ全額カットしてもらいます。金額が多い場合は5年返済で交渉することもありますが、5年間安定して支払える人は意外に少なく、なかなか難しいことが多いです。

弁護士に依頼した債務整理によって消費者金融・クレジット各社に500万円の借入残高があるという方が、(借入期間や利息によって変わりますが)3年間で200万円を元金だけ払えば、3年後に消費者金融の借り入れが0になる、ということが起きます。

それでも毎月5〜6万円を支払うことにはなりますが、債務整理前だと利息だけで月10〜20万円を払って元金は永久に減らない、という生活を送っていたわけですので、「借金0の生活に向けて出口が見える」というだけでも大変大きなことなのです。

弁護士に依頼しなければ、それ以降3年間苦しみながら払う利息だけで400〜500万円くらいになり、しかも元金は全く減らないどころか、たぶん増えてしまうのですから。

債務整理ができるケースは、まず、家計表を厳密に作ってみて、返していける余力があること、債務整理後の残元金はせいぜい200万円〜300万円程度までであること、などです。

相談者の中には、破産や民事再生が嫌だ、困ったときに借りられなくなる、といって、右も左もなく債務整理を希望される方がいますが、債務整理をしたものの1,2年でまた返せなくなって火だるまになる人が結構います。ですから、良心的な弁護士は、無理に債務整理をするくらいなら自己破産や民事再生を勧めます。その方がよほど有利ですし、家族全体も立ち直ってもらいやすいからです。

特定調停


特定調停は、債務整理を裁判所が一定の強制力をもってやってくれる、という制度です。

弁護士に依頼された場合は、ほとんどの場合は、特定調停を申し立てずに、債務整理(消費者金融との間で合意書を結ぶ)で終わりますし、その方が早くすみますし、結論としても有利になるように思います。

特定調停のよさは、いざ交渉が暗礁に乗り上げた場合には、裁判所が「17条決定」という仲裁案を判決に準じた形で出してくれることです。この決定の内容は、「残元金と、決定をした日までの利息をあわせた合計額を、3年で分割して支払いなさい」というものです。

消費者金融業者は、この決定に異議を言うこともできますが、多くの消費者金融は裁判所の決定ということで尊重して異議を言いません。この決定は、効力が判決と同じですので、これに違反すれば、消費者金融は即座に給料の差し押さえもできるなど、消費者金融にとっても、わざわざ裁判を起こさないでも、借りている側が手間ひまかけてくれて、判決と同じ結果が得られる、といううまみがあるからです。消費者金融側は調停に出頭しないことも多く、多くは電話対応で済ませています。

しかし、欠点もあることは理解しておく必要があります。

まず、特定調停は、本人でもできるという風に宣伝されていますが、実は簡単ではありません。申し立てするまでに必要な書類は、家計表・財産目録・債権者一覧表など、多岐に渡ります。支払い見込を証明するよう求められるので、記載しないといけない量や取り寄せないといけない資料は、破産申立書を作るのと手間としてそう大差ないこともあります。

裁判所が教えてくれるわけでもありません。裁判所は一方当事者の味方はできないので手取り足取り教えられないのです。

結局、借り入れされている方は、こういう難しい書類の作成に手間取り、時間を空費し、ストレスになっています。また、その間、消費者金融との話も自分が対応しなければならず、悩まされます。弁護士が債務整理する場合は、まず受任しましたという通知を送りますので、取り立てはその時点で止まります。消費者金融との連絡はすべて弁護士がしますし、申立書の書き方も必要な資料がなにかも、丁寧にお教えしますので、資料さえ集めてもらえれば弁護士が補充し、最終は法律事務所で清書しますので、悩まされることがありません。

また、しろうとの方が申し立てた場合には、消費者金融が強硬で裁判所での調停に応じなければ、その時点でしなくてもよい不利な妥協をすることになることもありえます。

支払い見込がない場合、消費者金融側が応じる見込がない場合は、調停は打ち切られます。となると、あらためて弁護士に依頼して民事再生や自己破産の手続きをやりなおすことになります。時間も無駄ですし、不安とストレスは大変なものです。

また、調停成立日までの利息が上乗せされる分、弁護士が間に入る債務整理より支払総額でかなり不利になることもあります。

さらに、本来ならば、5年以上利息を取られすぎているようなケースでは、借りている方が訴訟を起こせば、消費者金融から逆に何十万円という金を取り返せることがあります(過払金を請求するといいます)。しかし、特定調停は、そういう取り返す作業までやってくれません。ですから、過払金がある場合は、特定調停だけでは逆に損をします。弁護士に依頼した方が得ということがおきます。

見逃せない被害としてあるのが、弁護士や司法書士でない者が、特定調停をビジネスのようにして、申立書作成費用などといって手数料を取ることが横行しています。

特定調停の申立書類は、裁判所への提出書類なので、弁護士か司法書士以外が、費用をもらって作成することはできません。行政書士やNPO法人がこういった裁判所提出書類作成料を受け取ったら違法行為です。

こういった弁護士・司法書士以外が勧める特定調停で、逆に支払総額が増えて過払金も取り返さずに終わってしまい、不利な結果となる人も少なくありません。

一番問題なのは、行政書士やNPOに相談しても、消費者金融との交渉は代わりにやってもらえません。弁護士でなければ自己破産や民事再生の申立代理はできません(司法書士は申立書類の作成はできます)。だから、弁護士・司法書士以外に相談すると、他に選択肢を与えてもらえず、支払い見込がない人でも無理矢理に特定調停を勧められて、手数料だけは請求される、1年もしたら結局支払えなくて、さらにひどいことになってしまった、といったことが起きかねません。

借金の整理をするには、幅広い選択肢の中から、その人に応じて一番妥当なものを選ぶことが大切です。

私も、特定調停を申し立てることはありますが、それは、消費者金融との債務整理の交渉が暗礁に乗り上げ、裁判所からの決定をもらう覚悟で行かないと貸主からの妥協が得られない場合が主です。

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